特許庁の所掌事務とは?産業財産権=特実意商+営業秘密?

少し前にこんなニュースがありました。

日本企業の知的財産を守る「秘密の金庫番」来年度からスタート
http://goo.gl/GdhMY2


記事によれば、「特許を出願していないと、営業秘密が奪われて訴訟などを起こす場合に、企業はそのノウハウをいつから保有していたかを示す証拠を示しにくいデメリットがあった。
 特許庁はこうした課題を解決するため、営業秘密の開発時期と内容を暗号化したデータを専用サーバーで保管。政府機関の管理により、裁判でも使える有力な証拠を残す仕組みを整える。」とのことです。

 

ここで疑問に思ったのは、「営業秘密」は特許庁の所掌事務なのか、ということです。

 

僕はてっきり経済産業省の所掌事務かと思っていました。
例えば、不正競争防止法の担当課は、経済産業政策局の知的財産政策室です。

経済産業政策局の関係法令一覧
http://goo.gl/CyeeQb


そこで、経済産業省設置法を見ると、特許庁の所掌事務は、以下のとおりです。

経済産業省設置法>
第二十三条   特許庁は、前条の任務を達成するため、工業所有権に関する出願書類の方式審査、工業所有権の登録、工業所有権に関する審査、審判及び指導その他の工業所有権の保護及び利用に関する事務並びに第四条第一項第七号、第五十六号及び第五十八号に掲げる事務をつかさどる。

経済産業省設置法
http://goo.gl/kzMr99


要するに、特許庁の所掌事務は「工業所有権」に関する諸々の事務です。
では、「工業所有権」には「営業秘密」は含まれるのか。
経済産業省設置法には、「工業所有権」の定義が無いので不明ですが、通常は、特許権実用新案権意匠権商標権の4つを意味しますよね。

特許庁のテキストでもそう書かれていますし・・・。

平成26年度知的財産権制度説明会(初心者向け)テキスト(p.5)
https://goo.gl/1D6Ep5

※「産業財産権」という用語は、権利の性質をより的確に表現するために、「工業所有権」という用語が改められたものです(知的財産戦略大綱参照)。

知的財産戦略大綱
http://goo.gl/8b9J9P


そうすると、今回の「営業秘密」の保管は、特許庁の所掌外なようにも思え、なぜ、不正競争防止法のように、経済産業省が担当しなかったのか疑問ですが、まぁ、色々あったのでしょう。

今後は、「産業財産権とは何か」と聞かれたら、「特許権実用新案権意匠権商標権、営業秘密」と答えなければならないでしょうか。


ちなみに、パリ条約では、以下のように、「工業所有権」には、不正競争の防止に関するものが含まれるようです。

<パリ条約>
 第1条 同盟の形成・工業所有権の保護の対象
(2) 工業所有権の保護は,特許,実用新案,意匠,商標,サービス・マーク,商号,原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止に関するものとする。

パリ条約
https://goo.gl/gKZ2ys